世間一般のイメージ
「学生の本分は勉強である」
いまだに大多数の親御さまはそう考えていることと思いますし、実際に医学部と理系学部ではそのような風潮が根強く残っています。一般的に言えば、大学とは高校を卒業後、社会に出るまでの準備期間として高等教育を施す場所ということで異論はないでしょうか。
また、その準備期間という意味も学問以外の遊びやさまざまなタイプの人間と交流して「人間の幅を広げる」といった、ある程度寛大なものだと言えるでしょう。この見解は大学の実情に関して「当たらずとも遠からず」というところですが、現在、短大も含めると実に2人に1人が大学に進学する状況で、その価値観も多様化しています。
とはいえ、多様化といっても実はそんなに大したことはなく、いくつかの典型的なタイプに分類される程度なので、それは次の大学生は何をしている?で詳述します。「学生の本分は勉強である」も「人間の幅を広げる」もその中の1タイプだと思っていただいて結構です。
大学で何を勉強するの?
高校生の中には「大学の勉強についていけないかも?」と不安を感じている人もたまに見受けられますが、よほど特殊な大学・学部に行かないかぎり、そんなことはまず有り得ません。入試を突破するということはその大学のレベルに達しているということです。安心してください。
その特殊な大学・学部というのは、具体的に言えば、慶応SFCやICU、早稲田大学国際教養学部、上智大学国際教養学部などの英語教育に大変熱心なところです。これらは帰国子女が多く、英語を日常的に使えないとひどい目に遭うかもしれません。上記大学・学部は明確にアメリカの大学を模範にしています。
あとは全般的に理系の学部は実験などが多く、出席もかなり厳しいので大変です。以上の学部・学科に「よく分からないけど勉強したい。お父さんも期待してるし。」程度の覚悟で入学すると、間違いなく後悔するでしょう。
逆に言えば、それ以外のところはとりあえず日本語が読み書きできれば卒業できます。笑い話ではありません。現実です。というわけで、「分数の割り算ができない大学生」というニュース、私としては特に驚くこともありませんでした。なんせ数学を勉強しないで経済学部・経営学部・商学部に入れる時代ですから。
文系学部ならどこを選んでも大して変わりません。「一般教養」+「学部の勉強」の簡単なテストを受けて、適当なレポートを書いて、コピーペーストで卒論を書けば、晴れて卒業です。ただし、大学にはきちんと通っておかないと情報が回ってこなくなり、単位収拾に支障が出ます。
こう書くと、大学ではまともに勉強できないのではないかと思われそうなのでちゃんと言っておくと、一部の大学はやる気のある学生を歓迎しています。
例えば、私の通っていた東京大学だと、教授は大きく叩けば大きく響く(もちろん、叩かなければ響かない)鐘のようなもので、熱心な学生は十分な教育(とは何か?という疑問は置いといて)を受けることができ、あまり勉強しない学生は嫌われるというアカデミックな風潮が学内に充満しています。
しかし、他大に関しては詳細までは分からないので受験情報誌を熟読してみたところ、どうやらそんなアカデミックな空気がある大学は少ないようです。そもそも教授というのは研究者であって教育者ではないので、それも無理からぬことかもしれません。
教授の話は基本的に驚くほど面白くなく、それを「アカデミック」という言葉でごまかしてくるので覚悟しておいた方がいいでしょう。この辺りはあのエジプト研究で有名な吉村作治先生が一言物申している『それでも君は大学に行くのか(TBSブリタニカ)』という奇書があるので、興味のある人はブックオフの100円コーナーで探してみてください。最近は教育関係の本を手当たり次第に読んでいますが、どれも何かズレているように感じます。
こちらは現実を踏まえた面白い本なので、定価で買うことをオススメします。「危ない大学」の著者、島野さんからは塾の掲示板に書き込みを頂きました。
385 :島野清志:2005/2/28 (Mon) 19:22:24:
危ない大学・消える大学シリーズの島野です。 まさに有言実行、ついに素晴らしい成果をあげられましたね。 若駒が修羅場を駆け抜けていったような爽やかさを覚えました。 今後とも当塾及び塾長の一層の発展を祈っております。
最近偽者も出没しているようですがもちろん本物ですよ。 人形は顔が命、大学はブランドが命。
専門学校化する大学
上で書いたような状況から導き出された結論が2001年からの就職難です。
ということで、この時期、反動的に専門学校化した大学・学部に人気が集まりました。つまり、実学一辺倒ですね。一番分かりやすいのがご存知医学部で、ここは同じ大学とはいえ、文系学部とは似ても似つかぬ職業訓練所と言えるでしょう。
あとは、前述した英語系学部、就職に直結する理系学部、豊田工業大学(トヨタが出資)などの企業系大学、航空大学校などの文部科学省管轄外の大学校などは、専門学校としてこれからますます人気が出てくることでしょう。
2006年前後から、団塊世代の一斉退職が迫るという外的要因をもって就職状況は一時的に好転しましたが、同時に導入されつつある年俸制・成果報酬型給与体系、経営の合理化を進める各社動向、IT革命による業務軽減、二極化が進行する世情などを考慮すると、喜んでばかりもいられません。学習意欲のない方には厳しい時代に突入していくと考えられます。
大学を「就職」という価値観のみに集約するこのような考え方は、個人的にはとても賛成できませんが、現時点においてもっともリアルな大学観とは言えます。もっと詳しく知りたい方は『学費と就職で選ぶ大学案内(石渡嶺司・三五館)』を参考にしてみてください。
以上が「大学」という不透明な場所の実態です。