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一口に大学生と言っても何百万人といるわけですから、その実態を完全に記述することはできません。しかし、そのタイプを大まかに分類することは可能です。
下にそのタイプを列挙しますが、現実的にはカッチリどのタイプというわけではなく、あるひとつのタイプをコアとして、他のいくつかのタイプの特徴も兼ねているのが普通です。そして、どのタイプが多数派を占めるかは時代・大学によって異なります。大学生の実態を掴むために活用していただければ幸いです。
正統派大学生
いわゆる「学生の本分は勉強である」タイプです。一般的には前述の専門学校化した大学・学部と田舎の大学、あとは超上位校に多く見られます。
特徴として、授業には真面目に出席し、常にレポートに追われているため、バイトは家庭教師や塾講師をそこそこ、あるいはほとんどしないことが挙げられます。
表面的には同じように見えても、実はこのタイプ、さらに二つに分類されます。ひとつは「将来を見据えて自発的に勉強」タイプ、もうひとつは「親に言われるがままに勉強」タイプです。前者は日本の明るい未来を背負ってくれますが、言うまでもなく後者に未来はありません。
典型的な症例として、就職が決まらないためナシ崩し的に大学院に進学し、大学に閉じこもった一生を送ることになります。これは私の偏見ではなく、当人たちの中でも「入院閑者」などと自嘲する向きがあります。大学の勉強をしているからエライ、と簡単に決め付けることはできません。注意しましょう。
大学の学問の延長といえばもちろんアカデミズムですが、現時点で博士号を取得(大学卒業後、少なくとも5年程度は大学院で勉強)して大学の役職に就けない方が全国で2万人います。彼ら・彼女らの優秀さを知っているだけに需要と供給の難しさを感じます。
チンピラ大学生
前述の「正統派大学生」の対極に位置しているのが、この「チンピラ大学生」です。東京の中堅以下の私立大学によく見られます。
彼らはほとんどまったくと言っていいほど勉強はしません。当然留年する人もいますが、大半は留年せずに無事卒業していきます。ユルい大学だとやり方はいくらでもありまして、例えば、授業は代返してもらい、テストはカンニング、レポートは丸写し、これで万事オーケーなわけです。
それでは何をして遊んでいるかというと、基本的には合コンかパチンコか麻雀しかしていません。まさにチンピラですね。たまに気が向いたらクラブにも顔を出すようです。
つまり、実は大してやることがないので「なんか面白いことない?」が口癖となり、お金がなくなると喫茶店で永遠に煙草を吸っています。というわけで、一番見ちゃダメな人たちです。
ダブルスクール大学生
このタイプはある意味すばらしい人たちで、「正統派大学生」とも共通するところがあります。ダブルスクールというのは、大学に通いながら資格の専門学校に通うことで、終身雇用神話が崩壊した昨今、にわかにその絶対数は増えてきています。
勉強するのはいいことだと思いますが、最初に「ある意味」と言ったのは、そのまま大学卒業後すぐに資格を取得できればすばらしいのですが、2~3年経っても合格できない場合はムキになってしまい、テレビでよく見る「28歳無職」が出来上がります。
周りを見渡すと、多浪している方はやはり司法浪人がほとんどです。たしかに弁護士になれば一発逆転ですが、年一回の試験にすべてを注ぐというのはかなりハイリスクです。資格というのは本来安定志向の強い方が向かう方向です。その安定志向がなぜか人生を賭けた大博打を打っているという皮肉がここにはあります。安定志向のギャンブラー…弱そうです。
最近、私の周囲でにわかに弁護士や公認会計士など最難関資格に合格する方が増えてきました。増えてきたといっても、年に2,3人といったところでしょうか。調べてみたところ、旧司法試験の平均合格年齢は28歳を越えていたそうです。うむむ、華やかに見える白鳥も水面下では大変なことになっているようですね。
ただし、2006年度から司法試験制度が大幅に変わり、主流は従来の一発試験型から2~3年のロースクール(法科大学院)を過ごして司法試験を受けるという形式に変わってきました。こちらは初年度の合格率が52%でした。とはいえ、必ずしも楽になったわけではなく、受かる人は大学受験の比ではないくらい勉強しています。
サークル大好き大学生
個人的にはまったく縁のなかった人種ですが、どうも大学内に一定数存在しているようなので書いておきます。ご存知のように、大学にはサークルというクラブ活動の延長のような団体が多数あります。大学といえばサークルという方もいらっしゃるのではないでしょうか。サークルには本当にいろいろありますが、イベント系、音楽系、映像系、運動系が人気です。かくいう私も大学入学当時、友人に誘われてテニスサークルに入ろうとしましたが、見事に面接で落とされてしまいました。
サークルといえばテニス、
という80年代的思考が見透かされてしまったのでしょうか。
というよりも、この話には裏があります。
当時(今は分かりません)、東大のテニスサークルは男だけ面接がありまして、「面白さ」「かっこよさ」「従順さ」をチェックするのです。なぜそんなことをするのかと言いますと、従順じゃなく面白くてかっこいい後輩が入ってくると、先輩がオイシイ思いをできなくなるからです。嘘のような本当の話です。その頂点を極めたスーパーフリーを見ればお分かりのことと思いますが、女の子が絡んだサークルはけっこうドロドロしています。ここには噂の大学デビュー組が群がっています。
ちなみに私が落ちたのは「反抗的」だったからのようです。 もう少しおとなしくしておけばよかったと思っているのは言うまでもありません。
書きながら思い出したのですが、そういえば、いわゆる「新歓コンパ」という行事にも10回ほど参加しました。大学に入ると「新歓コンパ」のビラが大量に撒かれます。例に漏れず、蜜に群がるアリのように参加してみたところ、全てのサークルに共通して言えたのは、先輩(+ノリ)がうっとうしいということです。そのサークル独自の一気コールがあったり、先輩がひたすら威張っていたりして、生理的に受け付けませんでした。
一般的にサークルにどっぷり浸かっている人は、そのサークル内で人間関係が閉じています。それを承知のうえで、気に入ったサークルがあれば入るのもいいのではないでしょうか。
フリーター大学生
大学生なのにバイトばかりしている人たちがいます。
大学生のバイトといえば、時間帯的に飲食業・塾講師・家庭教師がほとんどなのですが、特に飲食業の大学生バイトはひどい有り様です。深夜までバイトして、バイト仲間と朝まで飲み明かし、次の日の授業は当然休んで、またバイトに入ります。
これをハードにこなすと、バイト代が月20万を越えたりします。もはやフリーターです。
バイトはたしかに面白くてためになるところはありますが、何事もやり過ぎは禁物です。私の最初のバイト先で知り合った東大生は勢い余って大学を中退してしまいました。いまだその飲食店でバイトとして働き続ける彼が何を考えているのかは分かりません。
体育会系大学生
大学に入ってまでガッツリ体育会系の運動部に入る人の気が知れませんが、そこは体育会系、気持ちのいい人間が多いのもたしかです。
運動部にもいろいろあります。大学に入ってよく聞くようになったのは、ボート部とラクロス部です。どちらも高校以前からやっている人が少ないので、まじめにやったモン勝ちなところがありまして、ふたつとも東大は相当に強いようです。
話がズレましたが、体育会系の特徴はなんといってもその縦関係の強さでしょう。最も劣悪な環境と思われるラグビー部の人に話を聞いたところ、「4年は神様」と一言。他の部ではそこまではないと思いますが、そこは体育会系、似たようなものかもしれません。
このように環境は劣悪ですが、こと就職に関しては体育会系は抜群に強いものがあります。企業の採用枠には体育会系枠があるところも多いようです。とはいえ、就職目当てだけで耐えられるほど甘いものではないのも確実です。
最近、縁あって名古屋大学相撲部と絡むことが多くなったのですが、近くで見て改めて思うのが体育会系は基本的にいい奴だということです。もう一度大学生活を送れるなら名古屋大学相撲部に入りたいとさえ思っていまして、その熱意が認められたのか、現在は社会人部員に登録してもらっています。
行動派大学生
趣味が高じて、とにかく行動を起こしている大学生がいます。分かりやすいのは、世界中を旅するバックパッカーでしょうか。ボランティアで世界各国を巡る人もいます。古典的ですが、自転車で日本一周もいまだに人気コースです。他にも登山やヨットなどがあります。共通しているのは「なんかデッケーことしてぇんだよ!」というエネルギーです。彼らは非常に情熱的で、大学生活の有り余った時間を見事に昇華しています。
一風変わったところでは学生団体や学生起業があります。
一昔前は学生団体が「大学生ネットワーク」作りに熱心でしたが、最近の流行は「学生起業」のようです。私も一応、学生起業志望家(変な肩書き)メーリングリストに参加させてもらっていました。流れてくるメールを見ていると、20歳そこらで社長という人も珍しくありません。収益はまだバイト代程度のようですが、彼らの自ら考えて動く力には感心しています。ただし、中には「就職するために学生起業してみる」という、不思議な考えの人もいたようです。
2003年当時、動き回っていた起業家志望はすでに1000人はいたと思うのですが、見事にほとんど駆逐され、それでも残った人たちは以下のような会社を経営しています。
ただ、時代が時代だっただけに今後どうなるかは不透明です。
2012年現在は一周してお金儲けよりもNPO法人でのボランティア活動が流行のようです。実は私も日本ビーチ相撲協会というNPOの副理事長をやっていますので、興味のある方はぜひ参加してみてください(夏のみ活動)。
単なる引きこもり
最後になりましたが、これは説明の必要はないでしょう。
ただ引きこもっているだけの大学生です。なにせ姿が見えないので何をしているのかは不明。最近の調査で存在が確認されたので、一応書いておきます。
以上、まとまりなく徒然と書いてしまいましたが、少しは大学生の実態を伝えることができたでしょうか。「勉強はどうなってるんだ?」という声が聞こえてきそうですが、ここで書いたように、大半の大学生にとって勉強は二の次です。だから、分数の割り算ができなかったり、数学なしで経済学部に入れたりするんですね。
このような状況がいいのか悪いのか、私には分かりません。ひたすら遊んでいても社会に出ればしっかり働く人も多いですし、むしろ勉強だけしていた人よりも優秀な場合もあります。その逆も当然あります。
社会のニーズは多様です。大切なのは「単なる引きこもり」だけは避けて、あとは自由に試行錯誤してみることです。正解はありません。結局のところ、大学には有り余る時間があるだけなのです。何をするかはあなた自身で決めることができます。