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まず、よく生徒から「過去問演習って意味あるんですか?」といった質問を受けるのですが、とりあえずその返答としては意味があるどころではないと答えておきます。特にボーダーライン付近の10点前後は過去問演習で一瞬にして詰められることを考えると、合否の分かれ目自体が過去問演習にあるといっても過言ではありません。一方で、解き方次第ではほとんど意味がないということも確認しておきたいと思います。話を分かりやすくするために、まずは悪い例から。
悪い例
- ×どうせ本番じゃない。緊張しても仕方ないからリラックスして解く
- ×時間は正確に計らなくてもいいだろう
- ×配点は公表されてないし、○×だけ付けてみる
- ×同じ問題は二度と出ないだろうから特に気を付けることもない
- ×ボーダー越えてたらラッキー。越えてなかったらもうダメだ
- ×しょせん参考記録だから一年分で十分だ
- ×解いて答え合わせするだけだからネットにある過去問でいい
この辺りは全部論外です。ひとつでも当てはまった人は深く反省しましょう。過去問演習は逆転合格への最も重要なプロセスですが、しかしながら、塾・予備校で対策するのが難しい領域でもあります。その理由としては、私立大学個別試験は学部レベルで問題傾向が異なっておりひとつひとつに時間を割けないこと、そしてもうひとつ決定的なのが、あくまで自分で考えなければ効果が期待しにくいことが挙げられます。ちなみに、「過去問なんか一回も解かずに受かった」と誇らしげに語る方も一定数いますが、順当合格の人の意見は全く聞く必要がありません。最後でまとめますが、もはやそういう問題ではないのです。
では、そろそろ本題に入ります。
良い例
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1. 本番をイメージして集中力を切らさず時間いっぱいまで解く
- 本番では通常よく知らない場所、よく知らない人たちに囲まれて問題を解かなければなりません。イメージトレーニングを積まずにいつもと同じ力を発揮できると考える方が不自然です。特に英語に関しては頭がのぼせてしまうと何回読んでも意味が掴めないという状況に陥りやすく、それを見越して第一問に難問を持ってくるという出題方式はもはや典型と言ってもいいほどよく見受けられます。傍から見れば「そこまでやるか?」という感じでしょうが、普段できることを試験でもできるようにするためにはイメージトレーニングが非常に重要です。真剣に解いてください。
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2. 問題を分析する
- まずは当然のようにどのような問題構成になっているのかを分析します。英語であれば長文と文法の比率はどの程度なのか、英作はあるのか、空欄補充はあるのか、単語一致問題はどうか、TF問題はあるのか、あるとしたらどの程度細かいのか、これら全てを各科目毎に完全に把握します。つまり、試験開始前にどのような問題が出題されるのかを頭に叩き込んでおくのです。そして、年度を重ねていきながら特に社会に関しては「この学部はこの辺りが狙われる」と人に説明できるくらいにまで習熟してほしいと思います。一方で、私大個別試験は頻繁に傾向変化が起こり得ます。しかし、その場合は全受験生が平等な立場になるだけであり、みなさんが不利になるわけではありません。したがって、傾向が変わらなかったら単純にラッキー、変わったとしても平常心で臨む覚悟を決めておきましょう。
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3. 間違えた問題の中で「うまくやれば取れた問題」を特定する
- いわゆる傾向と対策の「対策」部分にあたると思うのですが、まず認識しておきたいのは限られた時間で万全な対策を取ることは不可能です。赤本等には「アクセント問題にも対応するべく普段から~」といった恐ろしく大ざっぱ、かつ、非現実的な対策が掲載されていますが、私が言いたいのはそういうことではありません。より現実的・具体的な対策です。たとえば、英語で「本文に合致する内容であれば1、合致しない内容であれば2、どちらでもない内容であれば3をマークせよ」という問題があるとしましょう。もちろん英語の読解力が基礎になることは誰でも分かるのですが、一方で、「おそらく3が多くなることは有り得ないな」という読みは可能なわけです。というのは入学試験という性質上、結局は読めたか読めてないかを聞きたいわけで、全く読めていない人が全て3にマークして高得点を取るという事態は大学側としても避けたいはずだからです。これは社会の問題でも同様に「以下のa~dの中から正解を選べ。ただし、正解がない場合はeを選べ」という問題があるとして、eが多数を占めることはまず考えられません。とはいえ、もちろん3が答えになる場合もありますしeが答えになる場合もあります。そこで、賢明な対策としては「まずは3やeはないものとして考える。そのうえでどうしても答えが見つからない場合は仕方なく選ぶ」というスタンスでいくことをあらかじめ決定しておくのです。こうすることで苦し紛れの無用な間違いを減らすことができるはずです。長くなりますが、もうひとつくらい例を挙げておきましょう。早稲田商学部過去問で”go”の後ろに前置詞を入れる問題があり、答えは”for”でした。ここで”go for-“で「~を得ようと努める」という熟語自体も重要ではありますが、それよりも”to”を選んだ人は大いに反省の余地があるわけです。「早稲田大学の入試で”go”の直後の”to”を聞くか?」という疑問はあって然るべきで、常識的に考えてそれは有り得ません(もちろんボーダーフリーの大学なら素直に”to”が間違いなく正解ですが)。こう考えることで少なくとも”to”は選択肢から除外でき、そのことによって正解確率は多少なりとも上がります。熟語を知らないから終わり、ではなく、間違えはしたもののこう考えたら取れたかもしれない、そしてその視点で全てを見直していくとココとココは取っておきたかった、そのように答えを絞っていくことこそが過去問演習の最大のポイントだと私は考えています。いまさら知識量自体を大幅に増やすことは難しいですが、考えに考え抜いて答えを絞る習慣、また、大学のレベルにピントを合わせるという訓練はこれからの期間で十分に可能です。この意味で解説を熟読することが必要になってきます。昨今はネット上に過去問があるために赤本を買わない人も見受けられますが、自分が入りたいと思っている学部は必ず買うように。そして、正解に納得するのではなく、正解まで「自分が」どのように辿り着けるか、これを基準としてじっくり時間をかけて考えてみてください。ここだけで早稲田であっても10点前後は伸ばせます。
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4. 解き方を工夫する
- たとえば、かつての東大英語は時間制限が非常に厳しく(今は知りません)、センター英語を50分程度で終わらせることができる人でも時間が足りませんでした。それでどういう解き方が編み出されたかというと、「試験開始前の時間を使って最初の英文を透かして読んでおく」という斬新すぎるものでした(笑)。常識的に考えればどこからどう見ても変態的行為だと思いますが、当時の予備校で大々的に薦められ、また、受験生の多くが実際に行っていた秘技であったことも事実です。私がここで言いたいのは実際にみなさんも透かして読めということではなく、「そこまでやるか?」を受かる人たちは真剣にやっているということです。「試験開始直後の一分間は深呼吸をしながら冷静に周囲を観察、次の2分間で問題全てに一通り目を通してから解き始める」などもありました。解く順番を決めておくなどは序の口で、決めていない人の方がおかしいくらいです。これまでは一般的な大学受験知識を身に付けてきました。しかし、これからは各自で考えて受験学部に特化した解き方を完成させなければなりません。逆転合格を真剣に目指すのならそこまでやるのです。早稲田の場合はボーダーライン付近の1点(小数点以下第三位まで出します)以内に100人固まることはザラで、1点でも多く取れればそこが合否の分かれ道になることだって普通に有り得ます。
さて、悪い例と良い例を挙げてみましたが、少しでも何かが伝わったでしょうか。塾としての見解はともかく、私個人としては大学受験が全てとは毛頭思っておりません。しかしながら、真剣にやるべきときにやらない人が単純に面白くない人だというのも十分に知っていますし、ここを見ている方たちもそれには同意してくれると信じています。
やると決めたからには半端はなしでいきましょう。