2018.11.13
速読の重要性―読み込みの意義
前回のコラムでは読解に特化した文法を実際に使ってもらうため、具体的な読み込み作業についてお話をさせていただきました。今回はそこからもう一歩進めて、皆さんに「納得して」この作業を行ってもらうために、なぜ「読み込み」という勉強法を採用することで速読ができるようになるのかについてお話をさせていただきます。学習効果の観点から納得度は非常に重要です。
大学入試英文を速読するために
以前のコラムで紹介したように「構造を把握」して「書いてある通りに読む」ことができるようになれば、あとは読み込みを行うだけで総合的に英語力を強化することができます。読み込みで強化できるポイントは以下の4点です。
① 語彙強化
② 前から読むための文法=予測能力の強化
③ 慣れの強化
④ 効率の強化
① 語彙強化
やはり単語・熟語を知らなければ英語は読めません。したがって、語彙強化型の受験勉強は遥か昔から変わらず行われているわけですが、特に速読という観点から語彙の学習について考えた場合、単語・熟語への反応速度を上げるという形式で学習を進めておくことが求められます。そして、反応速度を上げるには反復練習が最も効果的です。読み込みによって、同じ英文=同じ単語を何百回と繰り返して日々反復するので、単語・熟語に対する反応速度は日本語に変換する前に意味を理解できるレベルにまで上がり、読むスピードが大幅に向上します。
② 前から読むための文法=予測能力の強化
英語を速く読むという観点でとらえたときに、後ろから英語を訳しあげるという読み方は最悪と言えます。これは説明するまでもないかもしれませんが、英語を後ろから訳しあげて読むということは一度英文を最後まで読んで、その後に意味が発生するというふたつのステップを踏んでいるということになり、前から読む場合に比べて明らかに二度手間です。これに関しては全英文を見た後でなければ正確な構造は掴めないという反論もあるとは思うのですが、前から読むための文法というのは100%の正確さを捨てる代わりに98%程度の正確さでとにかく速く読むことを目的としています。
例えば、EDIT STUDYで学習している生徒なら”The fact that…”ときた場合、このthat節を見た瞬間に「同格のthat」と考えます。あるいは”the ability to bring up…”とくればこのTo不定詞の用法はほぼ確実に形容詞的用法、”anything that…”ときた場合はたぶんこのthat節は形容詞節、他にも”When we watch animals…”ときたらこの英文は5文型になるのではないか、など100%そうなるとは確信できないまでも英語という言語の性格上「たぶんこうなるだろう」という予測をしながら読んでいきます。
これはある程度以上英語が得意な方はすでに無意識に行っている作業ではありますが、英語が苦手という段階から10ヶ月で逆転合格を目指すためには意識的に鍛えていかなければならない能力です。当塾の英語の授業で前から読む訓練を徹底しているのはこの予測能力を養うためです。読み込みは同じ英文を何百回と読む作業のため、このような英語のパターンを体に染み込ませることができ、読むスピードを向上させることができます。
③ 慣れの強化
“Practice makes perfect.”という諺もあるように、多少の誤差はあるにせよ、簡単に言えば「これまで読んだ英文の総量=英語力」と言えます。中学で習う英文法程度の知識がある方であればあとは大量に英語を読んでいくうちに自ずと英語は読めるようになります。これは不思議なことではありますが、まぎれもない真実です。”This is a pen.”をわざわざ「これはSVCの第二文型。ゆえに、S=Cが成り立つ。したがって、This=a penを表す」などと文法的に解釈しながら読む人はいないように、最終的には文法はほとんど意識しないで、かつ、正確に読めるようになるのですが、そのためにはまず正確な型を身に付け、その後に大量の英文に触れて英語に慣れる必要があります。
④ 効率の強化
読み込みは1回2回ではなく数十回、数百回単位で行うものですので、読み込み用テキストに出てくる単語・熟語はほとんど見た瞬間に意味が頭に浮かぶレベルまで反復学習することができます。その際、前から読むという意識を持って読み込みをしていくことで予測能力も同時に鍛えることができます。さらに、音源と合わせて読み込むことでおおよそ1分につき150語程度の英文量に触れることができ、単純計算でいくと60分で9000語、3時間あれば27000語分の英語に触れることができます。センター英語の総語数が現在4000語前後ですので、これは3時間の学習でセンター試験約7回分の英文量を精読できているということです。このように、読み込みは上記①②③のポイントを同時に、かつ、大量にこなすことができる圧倒的な効率の良さのため、最短期間で英文を速読できるようになるのです。
EDIT STUDYでは150以上の英文を授業で取り扱い文法事項をすべて明らかにしたうえ、それを何百回と読み込み続けてもらっています。読み込みは単語帳暗記に比べて学習初期は効果が実感しにくい勉強法なのですが、3ヶ月程度を目安に継続的に行えば必ず英語力は向上します。最後に、学習に役立つ参考文献をご紹介します。
◇参考文献
速読英単語入門編
一通り文法事項を確認したあとに入る読解用テキストとしてオススメしておきます。英文は相当簡単ではあるのですが、とにかく正確に大量に読み込むことを目的として読み込みましょう。
ペーパーバック
上記「速読英単語入門編」できちんと型を身に付けた後は、どんどん知らない英文にチャレンジしてみましょう。図書館などに行けば子ども向けの簡単な英語書籍(ペーパーバック)が置いてありますので、これをとにかく大量に読んでいく、いわゆる「多読学習法」です。ポイントは3つあります。
① 辞書はひかない
② わからないところは飛ばす
③ つまらなくなったらやめる
勉強という感覚ではなく、あくまで読書として楽しむことがコツです。