2019.12.9
浪人生コラム③-私立大学の合格者減少の背景とは【私立大学編】-
皆さんこんにちは、浪人生コラムを担当しております初田です。
前回までのコラムでは、現役生や浪人生の方々の置かれた環境を一通り概観してきました。大学受験という枠組みだけではない国づくりという単位でいまの受験環境が作られており、一過性の受験難ではないことがお分かりいただけたかと思います。
今回からのコラムでは、なぜ国の政策に私立大学が影響を大きく受けるのかや、今までの受験環境を踏まえ直近数年間の受験環境にもフォーカスを当て、現役生、浪人生の方に受験を考え、塾・予備校を選ぶ材料を提供していきたいと思います。
数字で見る浪人生
なんで大学は入学者を減らすなんてことをしたのか―私立大学の立場から考える
私立大学の運営主体は「私」であり国ではありません。そのため、常に大学という組織運営における収支を意識する必要があります。この収支を大きく支える存在には学生からの「授業料」と国からの「経常費等補助金」があります。
東洋経済新聞社の調査(「補助金が多い私立大学法人」ランキング200)では、調査された659大学の経常収支に占める経常費等補助金の割合は平均して9.9%と全体の収支の1割を占めていることが分かっています。私立大学は大学組織経営において無視できない金額を国からの補助金という形で受け取っているのです。
この補助金は「私立大学経常費補助金」という制度によって運営されており、大学は2種類の補助金を国から受け取れるようになっています。一つが学生の数や教育研究、情報公開の程度によって交付額が決定される「一般補助」もう一つが大学の研究や学生支援によって交付額が決定される「特別補助」です。
国は「都市部の大学の入学者数を適正化し、都市部への人口流出を抑えることで地方創生を実現する」ことを目的としておりますから、私立大学経営での影響が大きい「私立大学経常費補助金」の「一般補助」にかかる基準を厳格化することで目的を達成しようとしています。
この目的の達成のために、国は各大学に以下のような通知を発表しました。
平成28年度以降の定員管理に係る私立大学等経常費補助金の取扱について(通知)
この通知の中で国は、2016年度から2018年度において、一定の基準の入学定員超過率を超えた大学について、学部等への補助金を「不交付」とすると決定したのです。
この基準の厳格化と規模別大学で見た大学の充足率の低下と志願者倍率の上昇に呼応していますね。
私大文系に限ってみると早稲田~大東亜帝国・関関同立はICUを除き全ての大学が大規模・中規模校に含まれています。
私立大学の視点に立ってみても、国の決定した政策に従い補助金を確保しなければならない事情があることがうかがい知ることができます。
さて、3回にわたりここ数年騒がれている私立文系大学の難化にある背景について数字と共に見ていきました。次回以降のコラムでは、では、現在の現役生や浪人生となろうとする方にとって重要な2020年度、そして2021年度以降がどうなっていくのか予想も交え考えていきたいと思います。