今回の「本番に強くなる方法」はずばりドラゴン桜からの引用です。1年で偏差値40から東大合格という、かなり贔屓目に見てもまず実現不可能な目標のせいですっかりトンデモ漫画の烙印を押されてしまってはいますが、個別事項としては面白く、かつ有用なものもありますのでチェックだけはしていました。
余談ですが、知人のおそらく日本有数の「大学受験のプロ」(ドラゴン桜に情報を提供する側の方・東大法学部卒)によれば、1年で偏差値40から東大合格も理論的には可能だそうです。ただし、達成するには1日12時間の勉強、さらには無駄を省いた精緻なカリキュラム、当然ながらそれを作成・監視する人間、そのうえでひとつひとつを丁寧に押さえていく根気が必要で、この但し書きの膨大さ、また、本質的にこの緻密さを持つ人が偏差値40であることは普通有り得ないことから、結論として「現実的にはまず不可能」ということのようです。
さて、本題に入りまして「本番に強くなる方法」とは一体何なのか。漫画では1ヶ月ほどこの話題で引っ張ってくれましたが、単刀直入に言えば「失敗を考慮に入れてトータル点数を意識する」ことだそうです。もう少し具体的に言うと、本番に弱い人というのは神経質な完璧主義者である傾向があり、ひとつの失敗でも気が動転して実力を発揮できないということです。実際、現実の入試ではどの科目でもまず満点は狙えないことから、失敗(失点)を考慮に入れていない人は本番に弱い人ということになります。
私としてもこの考えには賛成です。かつて高校の先輩に現役で東大理3合格確実と言われた天才的な方がいましたが、東大本試験で英語第一問冒頭の読解ができず、そのままペースを崩して英語全体が壊滅して1浪を余儀なくされました。つまり、幼少時から天才と言われて勉強も重ね、1浪できっちり東大理3に入るような超高学力を持つ方でも全科目で満点というわけにはいかず、確実にどこかで失点はあるということです。これくらいのレベルの人になるとその辺の予備校講師より遥かに学力は上ですが、それでも普通に失点はします。そう考えると、その他99.9%以上の受験生が「最初の失敗でペースを崩して…」なんてコメントをすること自体がおこがましいようにも思えます。そんなに完璧な学力があるのですかと聞きたくなりますね。
みなさんが受ける大学はほとんどがボーダー6割強から高くて7割です。センター試験の社会で考えてみると分かると思いますが、テストで7割と言うと相当失点したという感覚があるはずです。しかし、現実には7割も取ればほぼ全ての大学に合格します。
自分自身の実力を客観的に知り、取れるところだけを確実に取るという感覚は非常に重要です。センター英語で言うと、普段の平均点が140点前後の人が本番だけ都合よく160点以上を取ろうと願えば当然ながら無理が生じ、ペースを乱して壊滅という結果が待っています。実際に当塾の生徒にもそのような傾向が見受けられます。ここから敷衍して考えると、いわゆる逆転合格の難しさも分かると思います。どうあがいても実力以上の点数は出ませんし、無理に出そうとすれば実力以下の結果に終わります。
以上をまとめると、「本番に強くなる方法」は以下になります。
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1. 自分の実力をはっきりと知る
- これは過去問を数年分解いて判断します。直前期に過去問を数年分も解いて一度もボーダーを越えないようであれば実力での合格は難しいでしょう。希望的観測を持つのは力みと焦りの元になります。運を天に任せて気楽に受けた方がまだ可能性はあります。
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2. 解けるところだけを解く
- 全部は解けません。特に早慶上智は問題難易度が非常に高く(奇問・悪問含め)、長年受験指導をやっている人でも満点は取れません。実際に、上位大学になると各予備校が発表する解答例が割れているというのは有名な事実です。大学受験生がどうして満点を取れるでしょうか。
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3. 安心して失点する
- これは単純に1, 2の論理的帰結なのですが、念のため書いておきます。分からない問題は安心して失点していいのです。いつも通りやればいつも通りの結果になります。
参考になれば幸いです。