当塾はやや変わったカリキュラムを組んでいますが、正面からカリキュラムの説明をする機会はなかなかありません(話すと非常に長くなる)のでここで少し説明しておきたいと思います。以下のポイントをカリキュラム作成の際に重視しています。
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1. 配点比重
- 大体どこの私立大学でも英語・社会・国語の配点は、英語>社会>現代文>古文>(漢文)の順番になっていまして、国立と違って科目数が少ないことから、特に英語ができない方が最上位私立大学に合格する可能性は極めて低くなります。また、ほとんどの学部でボーダーラインは7割前後になっていること、難しいと言われる社会も近年は基礎問題の比重が高くなっていることを考慮すると、一般的な戦略として英語と社会を重視すべきというのは御理解頂けると思います。
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2. 科目特性
- 英語という科目は細かく分析すれば、1. 単語・熟語、2. 文法問題用文法、3. 構造把握(読解用文法)、4. 前置詞、5. 代名詞、6. 慣れ、に細分化されます。どれが欠けても入試で安定した高得点を取ることはできません。1・2に関しては暗記事項のため反復量勝負、3以降に関しては読み込み量勝負というように、ひとつの科目の中で異なった勉強の質が求められるうえに、意外と認識されていませんが単純に暗記事項の量だけでも社会に匹敵することから、英語は全科目中、最も追い込みが利かない科目です。直前の追い込みでなんとかなるのは1・2に関する部分だけです。ここに早稲田逆転合格は可能でも慶應逆転合格は厳しい理由があるのですが、ともあれ、年度開始から2ヶ月間も英語のみを勉強し続ける根拠はここにあります。対照的に、社会に関しては「正しく」勉強しさえすれば誰でも一気に成績が上がります。どのような勉強を「正しい」と呼ぶかは授業で確認していきたいと思いますが、点数に直結しやすい社会を夏前から集中的に叩き込む理由は国語の科目特性と大いに関係があります。英語と社会は上記のように異なった特性を持つ科目ではあるものの「勉強量が得点に反映されやすい」という点においては共通点があります。一方で、国語、特に現代文に関しては何を勉強すれば「誰もが」安定して高得点を取れるようになるかというノウハウが確定しているとは言い難い状況です。もちろん演習・問題慣れを通してある程度の対策を取ることは可能ですが、英語と社会ほど確実にセンター試験満点を狙えるかというと甚だ疑問です。英語と社会(特に世界史)は確実に満点を狙えると断言できるからこそ、現代文の不安定さは際立っています。また、古文に関しては勉強法の方に詳しく書いたのですが、勉強方法は現代文よりも確立しているものの、配点の割りに満点までに必要とされる勉強量が膨大です。
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3. 費用対効果
- 以上を踏まえ、最終的に問題になってくるのは限られた資源(時間)をいかに効率よく分配するかということです。時間が無限にあるのであればどの科目から勉強を始めるかというのは些末な問題でしょう。しかしながら、みなさんには1年、正確には10ヶ月間の準備期間しか与えられていません。この状況において「なんとなく不安だから」という理由だけで全科目を並行して勉強することは単なる思考停止でしかありません。懸命に考えるからこそ人に先んずることができるというのは自明の理で、また、大学受験は自分との戦いと表現する方はいますが、極めて現実的には明らかに他人との戦いです。そもそも「自分に勝つ」とは具体的に何を指すのか不明です。不明なものは目的に成り得ません。それでもあえて言うなら、他人との戦いの中で付随的に自分との戦いも必要になってくるというだけのことでしょう。やや話が逸れましたが、費用対効果という点を真剣に考えるというのは当然のことだと理解して頂ければ幸いです。そして、費用対効果の順に科目を並べれば社会>英語>古文>現代文となるのはいかに頑固な方でも真剣に「教えた」経験がある方なら納得してもらえる事実だと思っています。ちなみに、自分で勉強するだけであればこの限りではありません。
当塾のカリキュラムは以上の1~3を踏まえて決定しています。また、最上位校合格に必要十分な知識量を満たし、かつ、生徒の処理能力を越えないギリギリのラインでテキストも指定しています。本屋の大学受験参考書コーナーに行く、あるいは、大手予備校の配布テキストを見てみれば分かると思いますが、大学受験勉強に関する書籍は無限と思えるほど多数存在します。しかも性質の悪いことに、そのどれもが真剣に取り組めば大なり小なり一定の効果を発揮するものです。したがって、教える側からしてみれば「それは要らない」と断言することは非常に勇気のいることですが、すでにその段階は越えてきたという自負はあります。さすがに塾の指定テキストだけで私立大学入試の全てを網羅したとまでは言えないものの、センターと違って私立大学入試は満点を狙う類のものではありません。基礎を確実に固めたうえで、あとは各学部毎に対策を練って臨みましょう。